アニメーション監督術 第1回

10月10日。アニメーション監督術も無事スタートを切りました。
この講座はオムニバス形式で、毎回現役プロのアニメーション監督をお招きし講演していただくというもの。
テーマは演出の方法論ですが、監督としての心構えや体験談、制作の裏エピソードなど様々な話が飛び出します。

ということで、初回は杉井ギサブローさんをお招きし、アニメーションとアニメの違いを切り口に、「アニメーション表現とは?」という根本的なテーマについて語っていただきました。

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まずアニメーションとアニメの違いについて
アニメーションがコマ撮りという技法の面白さを追求するものであるならば、アニメは技法よりも物語を伝えることを追求したものである、とのこと。
アニメの例として「鉄腕アトム」が取り上げられます。

杉井さんは「鉄腕アトム」の制作に携わっていたときに、枚数を減らさないと間に合わないという事情から「動き」をかなり省略して制作していたそうです。
滑らかに動いていないにも関わらず、出来たアニメはとても面白かった。
このことが、アニメーション表現を志していた自分にとって、「絵が動く」とは何か、「動き」とは何か、を考える機会になり、その後のライフワークへとつながっていったそうです。

アニメは動きによる<質感>と<量感>を排除することで合理化を計った、という経緯があり、じゃあそれをどう補い<情感>を表現していくかということがテーマに。
そもそもアニメーションが絵で表現されている以上、実写のような質感表現は不可能。それゆえに記号的な情感は表現できるが、もっと心に響くようなものをアニメーションで表現するにはどうすればよいのか…。
35歳の時、杉井さんはそのようなアニメーション表現の壁にぶちあたり、10年の放浪の旅に出たそうです。
「人間の情感を表現できないのであれば、アニメーションを作る意味がない」
という言葉もあり、杉井さんのアニメーションに対する強い思いが伝わってきました。

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そして復帰後、最初に制作したのが、「銀河鉄道の夜」だったそうです。
「銀河鉄道の夜」の制作エピソードは特に興味深かったです。
宮澤賢治は作品を4回に渡り推敲を重ね、抽象化を進めていったそうで、それはジョバンニを誰にでも当てはまる存在として描くためだったのでは、と杉井さんは分析しています。
そんな宮澤賢治の作品にある抽象性を表現するために、ジョバンニを猫として描いたのだそうです。

この作品をつくることで、杉井さんがテーマとしていたのは、映画を「感じる」という領域に向かって発信できるか、ということ。
そしてそのためにはどんな演出をすればよいか?

話を聞いていて、杉井さんがどれだけ真摯にアニメーション表現に向き合っているのかが伝わってきました。そんな捉え方があったのか!と驚き、納得させられることもしばしば。

特に最後の方で語られていた、映画は人の脳の中に記憶として残り、その人の体験がミックスされ、観た人のものになっていく、という考え方にすごく共感しました。

現在制作中の宮澤賢治原作「グスコーブドリの伝記」では、動きに抽象性をもたせることで情感を表現できないか、ということがテーマになっているそうです。
講義の中ではパイロット版を見せていただきました。
来年春公開予定。完成が楽しみです。

最後の質疑応答の中で、絵画など他の表現方法においての抽象性について質問があり、答えの中で挙がった杉井さんの好きな画家が、クレーとミロだったのが印象的でした。何故かというと、私も好きだから。。。(個人的ですみません)
2人とも抽象だけど、情感のある絵を描くからなんだか納得。


講義の後、簡単な懇親会を開き、受講者同士の交流もありました。
この講座の受講者は全体的にクリエイターの方が多く、お互いの刺激にもなって有意義な時間だったのでは、と思います。
杉井さんはアニメーション監督術には2回来てくださるので、第2回目も楽しみです。(日程は未定です)


では、少し長くなりましたがこのへんで。
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by 2008_smallschool | 2009-10-16 17:18 | アニメーション監督術
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