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アニメーション監督術第5回 

アニメーション監督術第5回目の講師は片渕須直監督。
レポートが大変遅くなってしまい申し訳ありません。

ラピュタ阿佐ヶ谷での「マイマイ新子と千年の魔法」レイトショー上映も本当に大盛り上がりで、この講義のあった12月26日が最終日だったのが、年明けに再上映となりさらに再々上映が決まっています。
まさに一大ムーブメントを起こしている「マイマイ新子」
そのタイミングであったこの講義も沢山の人に来ていただき、「マイマイ新子」をより深く楽しめるエピソードや監督の思いを伝えることができたのでは、と思います。

受講者による講義レポートもあります!
詳しい講義の内容はこちらをご覧下さい。

ANIME'S IMPRESSION
たまごまごごはん

片渕監督には以前ちいさな学校で講師をしていただいてまして、ちょうどその頃取り組み始めていたのが、「マイマイ新子と千年の魔法」だったということです。
その授業の中で、
「映画は必ずしも映像で表現することに縛られない」そして
「映像では語らない部分が観客に広がりを与えることがある」
ということを話されていたそうで、その考えが「マイマイ新子」にも反映されているとのこと。

「マイマイ新子」の原作は半分はノンフィクションということで、作者である高樹のぶ子さんのバックボーンがリアルに存在しています。それゆえ、物語を構築するときの方法として、「どう組み上げるか」ではなく、「どんな風にきりとるか」と考えたそうです。

講義では実際の高樹さんの子どもの頃の写真、ロケハンで撮った大量の写真などをスクリーンに映し、解説がされていきました。

「マイマイ新子」で表現したかったこと。
それは「ノスタルジーに頼らない普遍的なもの」
そして大人にも子供にも観てほしい、そんな両面性を持った作品に仕上げたかった、とのこと。

その思いがよくわかるTVスポットがこちら

大人が子供に戻れる映画であり、子供は大人の違う一面を見ることができる。
一風変わったTVスポットですが、よくできてますよね。

片渕監督は、今までアニメーションをつくる際はキャラクターの設定や具体的な背景、細部をちゃんと描かないといけない、それをどうつくるかが大切、という考えを持っていたそうですが、もっと観客にゆだねる部分があってもいいのではないか。と考えるようになったとのこと。

確かに物語の中で出てくる昭和30年の世界と1000年前の世界のリンクについて、その理由や状況についての説明はありません。これはまったくの想像なのか、現実として起きていることなのか。そこの判断を観客にゆだねている、というわけです。
ただ「1000年前の世界」を表現する際、観客に具体的なイメージを与えるためにしっかりとした調査、裏づけは必須。沢山の資料からその努力は充分に伝わってきました。

ある部分で観客にゆだねた方がより面白い、ありきたりではない映画ができる、という監督の感性というか、選択はしっかりとした手ごたえを持って観た人に届いていると思います。
私も遅らばせながら映画を観させていただいて、はっきりと語られない状況とか、予定調和的でない展開がとても印象に残って、映画を観終わった後もじっくりとかみ締める、そしてもう一度観たくなる不思議な魅力を持った映画だな、と思いました。


「物語をいかに展開させていくか、というルールが主流となり普遍化されたことで何かが失われた」と片渕さんは語ります。
そして片渕さんが大学生の頃、友達から言われたという
「映画は人をびっくりさせるために作るもんだ」という言葉。

辻褄あわせをせず、不思議なことを不思議なまま描く。
それでも物語の着地点はこの映画独自の方法で用意されている。

講義を聞いて、映画を観て、ちゃんと納得がいきました!

穏やかな映画ながらも、観る人に新鮮な驚きや発見を与える「マイマイ新子」
2月12日までラピュタ阿佐ヶ谷にてレイトショー上映!

まだ観てない、という方はお早めに!
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では、長くなりましたがこのへんで。
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by 2008_smallschool | 2010-01-28 22:23 | アニメーション監督術

アニメーション監督術 第4回

レポートが少し遅くなりましたが・・・

アニメーション監督術、第4回目の様子をお伝えします。
第4回目の講師は相原信洋さん。
昨年度もちいさな学校には特別講義に来ていただいてますが、私はお会いするのが初めてだったので、そのパワフルな風貌とロックンローラーな姿勢にガツーンとやられてしまいました。
自称、アニ中(アニメーション中毒)。というプロフィールがウソ偽りでないことがよくわかりました。

相原さんは若いころ、アニメの彩色~動画の仕事をしていましたが、与えられたものではない自分のアニメーションが作りたいという思いから自主制作作品を作るようになったとのこと。
今まで作ってきた作品は80~90本。今だって数本の作品を同時進行で制作中。
まだまだ作りたいものがある。その勢いが衰えることはなさそうです。

現在制作中の、一週間に1本のスパンで計20本のアニメーションを1年で作るという、メモ的な短編を5本ほど上映していただきました。

短いからといって手を抜くということではなく、今の自分の足跡をなるべくリアルに残すべく作っている、とのこと。これらの集積が、自分にとっての教科書となり、長編作品へとつながっていく、とおっしゃっていました。
とにかく大事なのは続けること。昨日の自分の残像を今日につなげる。アニメは残像をつなげて出来ているのだから、自分の肉体だってそうじゃないと・・・。

続けていると手に生命が宿る、手が動いているのを脳が見ている感覚になるそうです。それってなんだかとても気持ちがよさそうですよね。
相原さんの作品は見ていてとても気持ちがいいから、きっと描いているときの相原さんの気持ちよさがそのままリアルに伝わっているのでしょう。

相原さんの昔の作品も沢山上映していただきました。
以下上映タイトル
「おしろい羽根」(1972)
「短距離ランナー」(1973)
「光」(1978)
「映像(かげ)」(1987)
「GOVORA」(1989)
「MASK」(1991)
「RAIN」(1996)

シュールな具象から音と形が有機的に変化する抽象、実写のコマ撮り作品まで、どれもこれも相原さんの唯一無二の世界が全開!!!という感じで圧倒されてしまいました。
音楽がまたいいですね。洗脳されていくような感覚がとても気持ちよかったです。

先ほど「抽象」と書きましたが、相原さん曰く出発点はいつも「具象」なんだそうです。「MASK」では「顔」がモチーフになっているけど、顔になりきらない、形となる一歩手前を意識していたとのこと。ひとつのものを観念的に捉える、相原さんの作品。現在は「耳」を元にした作品を作っているそうです。
ご自身の作品についておっしゃっていた言葉で印象的だったのが、「もしこれが別の人の作品だったらぼくはこの人に会ってみたい」という言葉。
自分の作品に対してそう思えたら本望だなぁと思いました。
人にもよるとは思いますが、どんな作品でもものづくりをしていると何度も立ち止まったり、不安になったり、時には苦しみにもなったり・・・・ということもあるでしょう。
そんな人は相原さんの言葉にパワーをもらってください。
「マスターベーションになってもいいから、自分のカラーが出るものを作る!」
「今作りたいなら今作れ!作らない理由なんて大した理由ではない!」

自分はそんな風に、自分の満足いく今を生きているだろうか?
そう問いかけ、悩むことさえ本当は馬鹿馬鹿しいのかもしれない。
やりたいことはどんどんやる!

講義の中で相原さんは「アニメーションって本当に面白いわ~」と何度もおっしゃっていました。
「30年前にも言っていたけど、今でも本当に面白い!」
「本当は刑務所で何にも邪魔されず描きたいくらい!」
そんな正真正銘のアニ中である相原さんにとって、アニメーションの面白さとは・・・
1、ある程度のものがかける
2、動く面白さを知る
3、実験とか壊すことが出来る
4、いい作品に出会ったときライバルとして見れる
5、テクニックを磨くこともできる

そしてアニメーションには、まだまだ新境地があるのです。

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*写真は懇親会の様子
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by 2008_smallschool | 2009-12-22 21:09 | アニメーション監督術

アニメーション監督術第5回、詳細決定!

アニメーション監督術の第5回目の講師は片渕須直監督に決定いたしました!
単回受講も受け付けておりますので、是非ご参加ください。

●12月26日(土)午後7時~9時
●講師:片渕須直
●単回料金:1,800円(学生1,500円)
 *先着順
●場所:アート・アニメーションのちいさな学校 地下劇場

片渕須直(かたぶちすなお):
初めて書いたシナリオ「名探偵ホームズ」からアニメの世界に。
「魔女の宅急便」演出補、「名犬ラッシー」監督。 短編映画「この星の上に」が各国のフェスティバルで入選、特別上映される。 構想8年の代表作「アリーテ姫」をスタジオ4℃で監督。
その後はマッドハウスに活動の拠点を移す。
2009年最新作「マイマイ新子と千年の魔法」がオタワ国際アニメーション映画祭長編部門入選。

申込みはホームページの申込フォームより。
予約受付メールを返信致します。

講義の話題はもちろん、現在公開中の「マイマイ新子と千年の魔法」
現在、上映存続のための署名活動が行われているのを知り、すぐに署名させていただきました。
なんといってもこの映画、ちいさな学校がお世話になっている講師の方が沢山制作に関わっているのです。
監督である片渕須直さんをはじめ、作画に石之博和さん、才田俊次さん、背景美術に山本二三さん。
応援しないわけにはいきません!
そして、ラピュタ阿佐ヶ谷でも「マイマイ新子と千年の魔法」がレイトショー上映されることになりました!

以下詳細をお知らせします。

日時:2009年12月19日(土)~26日(土)連日21:00~(94分)
料金:一般…1,300円 学生・シニア…1,000円 会員…800円
   水曜サービスデー…1,000円均一

作品紹介:
芥川賞作家・高樹のぶ子が、自らの幼少時代をモデルに描いた小説『マイマイ新子』をアニメーション化。舞台は昭和30年代の山口県-。空想好きの 少女・新子が豊かな自然のなかで、時に苦い経験をしながらも、仲間たちとゆっくり成長成長していく姿を描いた珠玉のアニメーション映画です。

制作スタジオ:マッドハウス

問い合わせ:
ラピュタ阿佐ヶ谷
〒166-0001東京都杉並区阿佐ヶ谷北2-12-21
TEL:03-3336-5440
E-mail:asagaya@laputa-jp.com

是非この機会にラピュタ阿佐ヶ谷へ足をお運びください!
生徒の皆さんは必須でしょう。
そして映画を観たら、アニメーション監督術へ!
よろしくお願いいたします。
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by 2008_smallschool | 2009-12-08 17:27 | アニメーション監督術

アニメーション監督術 第3回

アニメーション監督術、第3回目の講師は原恵一さん。

原恵一さんは、劇場版クレヨンしんちゃんの特に終わりの2本「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」「嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」が話題となり、「河童のクゥと夏休み」を2007年満を持して公開。高い評価を得ている監督です。
今回も原口さんに聞き手として参加してもらい、進行をしていただきました。

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最初に「オトナ帝国の逆襲」のラストの東京タワーのシーンについて、制作エピソードを色々お伺いして、話題は「戦国大合戦」のタイムスリップのシーンに。
なんの効果音もなくあっさりタイムスリップしてしまうことに関して、原さんの意図を聞くと、演出に対するスタンスについて触れる解答がありました。

若いころはカメラワークやアングルで複雑なことをやったり奇をてらうような演出もしていたが、長くやっているうちにシンプルな方がよいと思うようになった。それに大げさに変化を見せるよりも、いつの間にか変化していた方が驚きもあるしリアルだと思う、とおっしゃっていました。
タイムスリップのシーンは確かに少し唖然としますよね、シンプルすぎて。(観てない方はごめんなさい)
でも新鮮な驚きもあったので、なるほどなぁと納得しました。
演出にあたってリアリティがあること、自然であることは常に意識しているようです。

その後はメインである「河童のクゥ」の話題に。
この作品は原監督が20年温めてきた夢の企画だったそうです。
「一般的にアニメーションで求められてことは一切やりたくなかった。」
「いかにもなアニメーション的キャラではなくリアルな少年像を描きたかった。」
こういう言葉の中に原監督の中にある反骨精神や表現に対する欲望のようなものを感じました。

実際に「河童のクゥ」は子供の気持ちの変化がすごく繊細に丁寧に描かれていたと思います。
小学5年生らしいリアルな仕草や台詞は、普段からしている人間観察のたまものだそう。
電車の中で音楽を聴いたり、携帯を見たりしている若者に対して「耳をふさぐな」という熱い言葉もありました。
原口さんからの「クゥで達成できたことは何か」という質問に対し、
「やっとリアリティのある人物が描けた」
「充分ではないが、20年前に作りたいと思っていたことにウソはついてない」
と答えていたのが、とても印象的でした。
どうしても作りたい作品があるって素晴らしいことですよね。
同時にとても幸せなことのように思います。

最後に質疑応答があり、「オトナ帝国」制作時の精神状況が最悪だったこと、でも追い詰められたからこそ逆につきぬけた表現ができるようになったことなど、興味深い話が聞けました。
ボロボロの状態から生まれた「オトナ帝国」が高い評価を受け、自分の「これはダメだ」という感覚も時にはあてにならない。自分の枠で考えすぎていた。と感じたそうです。
固定概念をとっぱらって、柔軟に考えることって大切。とても共感できました。

原作品のリアリティあふれるキャラクター、台詞、演出の魅力や、どんな作品に影響されたか、というルーツについても知ることができ、とても面白い講義となりました。

例のごとく懇親会も行われました。今回は阿佐ヶ谷にある居酒屋にて。
かなり深夜まで続いたそうです。
濃い交流が出来たのではないでしょうか。

原恵一さん。本当にありがとうございました!
第4回目の講師は相原信洋さんです。
日程は12月12日。単回受講も受け付けています。
申込みはホームページの申込フォームより。
今までのような商業ベースの監督ではなく、アートアニメ、実験アニメの作家ということで、どんな話が飛び出すのか、ますます楽しみです!
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by 2008_smallschool | 2009-12-02 21:58 | アニメーション監督術

アニメーション監督術 第2回

アニメーション監督術、第2回目の講師は細田守さん!

今年の夏、「サマーウォーズ」が公開され、多くの人を楽しませてくれた細田監督。
前作の「時をかける少女」にひきつづき、たくさんの人を魅了した細田作品の演出術について、熱い講義が展開されました。
今回は聞き手にアニメーション研究家の原口正宏さん(学校ではアニメーション史の授業を担当)をお招きし、インタビュー形式で講義は進みました。

まずは原口さんが編集した、過去の細田作品のダイジェストを鑑賞&解説。
その後、細田さんのよく用いる演出方法について、その経緯と意図について伺いました。

○同ポジ(同じ画面、構図を繰り返す)の多用について
もともとは東映アニメーション時代に、作画枚数が3000枚と制限されている中で、その3000枚をいかに有効に使うかという問題の解決策として始めたそうです。
その中で手抜きに見えないように、ちゃんと演出として使っているように見せることを心掛けていたとのこと。
同じ画面の繰り返しによって生まれるリズムや面白さは、「時をかける少女」の当核シーンを観ても納得です。
他にも背景の枚数も少なくなるので一枚一枚のクオリティもあがるという話も。

○FIX主義(カメラワークを変えず動きでみせる)について
こちらもカメラワークをする動画制作となるとスペースをとるので、机の上を片付けなくてはいけないのが面倒という、周辺の理由を説明していて笑いを誘いました。
もちろんそれだけでなく、しっかり画面を止めて演技(動画)で魅せていきたいという意図もあるとのこと。カメラワークの中でもじわPAN(じわ~とPANする)は特に効果的で雰囲気を出しやすいから、そればかりになってしまいがち。それは表現者として敗北なのではないか。そのようなことも言っていました。

商業アニメを制作する上での制約を利用して「面白さ」を追及する。
その演出方法がしっかり考えられたものであることに感心させられました。

そして講義は「サマーウォーズ」の場面ごとの演出意図について、絵コンテを見ながら解説、その後映像で確認という流れに。
ネタバレするといけないので詳しくは書きませんが、印象に残っていたシーンの演出意図を知ることが出来、とても面白かったです。

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解説の中で作品制作のヒントになる言葉をたくさん聞くことが出来ました。
・想像力をかきたてる間の効果
・意味が通じるだけでは面白くない。
・キャラクターの心理にふみこむアイデアを探る。
・記号的になるとつまらなくなる。
・物語の肝、柱となるものを一枚絵でどう見せるか。(サマーウォーズでは「家族」)
・映画には必ずこれだ!と思う演出の答えがある。
などなど。

参加者の方々もメモを取り、真剣そのもの。
具体的な内容で、制作を志す人にとってとても為になる講義だったのでは、と思います。

講義の後は教室にて懇親会を開きました。
細田さんは常に20人くらいに囲まれ、様々な質問に休むことなく丁寧に答えてくれていました。
たくさんの人と関わり信頼関係を築いていかないといけない監督家業の資質をちゃんと持っている人なんだなあ、とまたしても感心。
そして参加者の方々の細田さんへの眼差しが本当にきらきらしていて、良かった…としみじみ思いました。

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結局0時近くまでお付き合いいただきました。
本当にありがとうございました!

さて、大盛況の第2回も終了。
第3回目は劇場版クレヨンしんちゃん、「河童のクゥと夏休み」の監督、原恵一さんが講師です。
乞うご期待!
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by 2008_smallschool | 2009-11-16 17:28 | アニメーション監督術

アニメーション監督術 第1回

10月10日。アニメーション監督術も無事スタートを切りました。
この講座はオムニバス形式で、毎回現役プロのアニメーション監督をお招きし講演していただくというもの。
テーマは演出の方法論ですが、監督としての心構えや体験談、制作の裏エピソードなど様々な話が飛び出します。

ということで、初回は杉井ギサブローさんをお招きし、アニメーションとアニメの違いを切り口に、「アニメーション表現とは?」という根本的なテーマについて語っていただきました。

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まずアニメーションとアニメの違いについて
アニメーションがコマ撮りという技法の面白さを追求するものであるならば、アニメは技法よりも物語を伝えることを追求したものである、とのこと。
アニメの例として「鉄腕アトム」が取り上げられます。

杉井さんは「鉄腕アトム」の制作に携わっていたときに、枚数を減らさないと間に合わないという事情から「動き」をかなり省略して制作していたそうです。
滑らかに動いていないにも関わらず、出来たアニメはとても面白かった。
このことが、アニメーション表現を志していた自分にとって、「絵が動く」とは何か、「動き」とは何か、を考える機会になり、その後のライフワークへとつながっていったそうです。

アニメは動きによる<質感>と<量感>を排除することで合理化を計った、という経緯があり、じゃあそれをどう補い<情感>を表現していくかということがテーマに。
そもそもアニメーションが絵で表現されている以上、実写のような質感表現は不可能。それゆえに記号的な情感は表現できるが、もっと心に響くようなものをアニメーションで表現するにはどうすればよいのか…。
35歳の時、杉井さんはそのようなアニメーション表現の壁にぶちあたり、10年の放浪の旅に出たそうです。
「人間の情感を表現できないのであれば、アニメーションを作る意味がない」
という言葉もあり、杉井さんのアニメーションに対する強い思いが伝わってきました。

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そして復帰後、最初に制作したのが、「銀河鉄道の夜」だったそうです。
「銀河鉄道の夜」の制作エピソードは特に興味深かったです。
宮澤賢治は作品を4回に渡り推敲を重ね、抽象化を進めていったそうで、それはジョバンニを誰にでも当てはまる存在として描くためだったのでは、と杉井さんは分析しています。
そんな宮澤賢治の作品にある抽象性を表現するために、ジョバンニを猫として描いたのだそうです。

この作品をつくることで、杉井さんがテーマとしていたのは、映画を「感じる」という領域に向かって発信できるか、ということ。
そしてそのためにはどんな演出をすればよいか?

話を聞いていて、杉井さんがどれだけ真摯にアニメーション表現に向き合っているのかが伝わってきました。そんな捉え方があったのか!と驚き、納得させられることもしばしば。

特に最後の方で語られていた、映画は人の脳の中に記憶として残り、その人の体験がミックスされ、観た人のものになっていく、という考え方にすごく共感しました。

現在制作中の宮澤賢治原作「グスコーブドリの伝記」では、動きに抽象性をもたせることで情感を表現できないか、ということがテーマになっているそうです。
講義の中ではパイロット版を見せていただきました。
来年春公開予定。完成が楽しみです。

最後の質疑応答の中で、絵画など他の表現方法においての抽象性について質問があり、答えの中で挙がった杉井さんの好きな画家が、クレーとミロだったのが印象的でした。何故かというと、私も好きだから。。。(個人的ですみません)
2人とも抽象だけど、情感のある絵を描くからなんだか納得。


講義の後、簡単な懇親会を開き、受講者同士の交流もありました。
この講座の受講者は全体的にクリエイターの方が多く、お互いの刺激にもなって有意義な時間だったのでは、と思います。
杉井さんはアニメーション監督術には2回来てくださるので、第2回目も楽しみです。(日程は未定です)


では、少し長くなりましたがこのへんで。
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by 2008_smallschool | 2009-10-16 17:18 | アニメーション監督術